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植物的思考動物的思考
-農耕民憲法と牧畜民憲法-


2006.01-2017.05 
大塚いわお

目次
植物的思考、動物的思考 -農耕民憲法と牧畜民憲法-
両者の比較
植物的思考と動物的思考の対比
牧畜民憲法と農耕民憲法
農耕民社会理解において注意すべき点
農耕民の取るべき途
農耕民社会、牧畜民社会のコンピューター・シミュレーション


両者の比較

植物を栽培して主に生活するのが農耕民であり、動物を飼育して主に生活するのが遊牧・牧畜民である。


農耕民は、日本、東アジア、ロシアなどの民族であり、牧畜民は、欧米、アラブ、ユダヤ、モンゴルなどの民族である。

日本人は、稲作をメインとする、農耕民の系譜に属し、一方、欧米人は、ある程度小麦栽培のような農耕もするが、牧草地を家畜を伴って移動して生活するシーンが多い点、より遊牧・牧畜民に近い系譜に属する。

以下の本文では、この両者が対照的な社会的性格を持っていることを説明し、それぞれの民の物の考え方、行動様式を、「植物的思考=農耕民的考え方」「動物 的思考=遊牧・牧畜民的考え方」と呼ぶことを提案する。あるいは、「植物的、動物的価値観、フレームワーク、行動様式」等と呼んでもよい。



植物的思考と動物的思考の対比

農耕民は、植物を栽培して生きているうちに、その思考、行動様式が、次第に植物の特性に合わせたものになっている。一方、遊牧・牧畜民は、動物、家畜を飼育して生きているうちに、その思考、行動様式が、次第に動物の特性に合わせたものになっている。


この両者の違いを、以下の表にまとめた。

植物的思考(農耕民) 動物的思考(遊牧・牧畜民)

P

場所、地点的側面(Place、Position)

P1

定着、定住重視
根付き、定着すること、不動であること、抜けたり、転じたりしないことを重視する。
一カ所に根付いてそのまま動かずに定着するのを望ましいと考える。
会社組織とかで、一つの会社に入ったら、そのまま動かず、抜けずにずっといるのが望ましいと考える。一つの会社組織での終身雇用を重んじる。転職、転社をする者は、脱落者、根無し草として疎んじられる。
一回根付いたら、そこで一生過ごすしかなく、人生をやり直せない。

移動重視
一カ所に止まったままなのを好まず、あちこち転々と移動するのを自然だと考える。
複数会社組織間を転社、転職することを自然なものと考える。
いつでも、どこからでも、新天地に移動してチャレンジできる、人生をやり直せる。

P2

蓄積重視
一カ所に定住して、財産、物資等のストックがたくさん溜まるのをよしとする。動かないので、ストックを持ち歩く必要がない。

不蓄積重視
物資等をたくさんため込むと、移動に不便なので、最低限必要な財産や道具のみを持ち、その他はなるべく持たない、蓄積しないのをよしとする。

P3

重さ重視
どっしり重くて、少々の風では飛ばない、動かない、抜けない、倒れないのを好む。大地にどっしり根を下ろすのを好む。

軽さ、機動性重視
軽くて、あちこち簡単に飛び回れる、動き回れるのを好む。機動性に富む。

P4

生え抜き重視
同じ一カ所に新芽として芽吹いてから、ずっと生え続けてきた者が本来その場所を占めるべきと考える。途中、抜けそうになるいろいろな苦難を乗り越えて、抜けずに頑張ってきたことを重視する。
会社組織とかで、その組織に新人として入社して、ずっと勤務し続けている者が、その会社組織で主導権を握るべきであり、余所から中途転入してきた者による組織支配を望ましくないとする。生え抜きが社長になるのが一番自然だと考える。

中途転入の許容
ある場所を占めるべき者は、特に、その場に以前からい続けた者でなくとも、最近余所からやってきた者でも一向に構わないと考える。
会社組織とかで、余所から中途転入してきた者による組織支配について特に問題ないと考える。

P5

受動指向
その場一カ所に止まったまま動けないため、環境変動に対して、動いて逃げることができず、受け身一方である。環境変動に対して、一方的に忍耐したり、マゾヒズム的考え方にになる。

能動指向
あちこち動き回ることができるため、環境変動に対して、動いて逃げたり、逆に攻めたりすることができ、能動的である。

P6

今いる場所・分野へのこだわり
今までいたところに止まったまま、動かない(動けない)。
新分野へと自分から進んで動いていくことがない。

新分野への進出
今いるところに止まらず、今まで行ったことのない新分野へとどんどん飛び出していく。

P7

しなやかさ、頑丈さの重視
風雨に当たったときに折れないようにするため、柳のようなしなやかさや、幹の太さ、頑丈さを重んじる。

素早さの重視
襲ってくる外敵から逃げ切るだけの素早さ、機動力を重んじる。

P8

大地、土地、水平指向
大地、下方向を指向する。大地から離れない水平方向を指向する。土地に執着する。

天空、垂直指向
天空のような、大地から離れる上方向、垂直方向を指向する。一つの土地に執着しない。

P9

視野の狭さ
ずっと一カ所に止まって、あちこち動かない、いろいろなところを経験することがないため、物事の体験の視野が狭い。

視野の広さ、グローバルさ
あちこち動いて、いろいろなところを経験するため、物事の体験の視野が広い。グローバルな視野を持っている。

P10

進行方向、目標の不明確さ
ふだん、ずっと一カ所に止まって動かないため、これからどの方向に向かって進めばよいかを決定するのが不得手である。方向音痴である。

進行方向、目標の明確さ
ふだん、いつも移動しているため、これからどちらの方向に向かって進めばよいか、はっきり決定するのが得意である。方向感覚に長けている。

T

時間的側面(Time)

T1

年功重視
年を取るほど、有用な蓄積が多く、大樹になり、立派になると考える。年の回った回数によって、樹木や人などの価値を測ろうとする。年取った者ほど尊敬され、偉いとされる。老人支配が起きやすい。

若さ重視
繁殖能力、移動能力を持っている、ある程度若い個体を重んじる。年取った者は、子供を産めないとか、移動とかで足手まといになるとして、疎んじられる。

T2

年少者の年長者追い越し禁止
年を取った個体が、年を取っていない個体よりも、有用な蓄積があり、常に上位で偉いとする。一定資格(日本のキャリア採用国家公務員とか)の年少者(後輩)が、同じ資格の年長者(先輩)を昇進とかで追い越すことが起きないようにする。

年少者の年長者追い越し容認
年を取った個体が年を取っていない個体より必ずしも有用とは言えないと考える。一定資格の年少者(後輩)が、同じ資格の年長者(先輩)を昇進とかで追い越すことが当たり前である。

T3

定期定型反復
毎年、季節、時計に合わせて、全く同じこと(芽吹き、開花等)を定期的に繰り返す。
農作業(田植えとか)で、全く同じ定型作業を、(苗毎とかで)連続で、何度となく反復して繰り返す。
物の考え方が、型にはまったものとなる。周囲の急激な変化に対応して考えのパターンを変えることができにくい。

不定期不定形不反復
動物(家畜)飼育、放牧は、植物に比べて、扱いの定期性、定型性、反復の度合いが低い。
物の考え方が、型にはまらない、融通の効いたものになる。周囲の急激な変化に対応して、容易に考えのパターンを変えられる。

T4

前例、しきたりの重視
ずっと同じ場所にい続けるため、今まで有効だった価値観、前例、しきたり、伝統が有効であり続け、それらの継続を重視する。新規なアイデアを自分から考案すること、創造性に欠ける。考え方が保守的であり、後進的になりやすい。

独創性の重視
新たな牧草等を求めて、新たな場所へと移動するため、その都度、新たな事態への対処が必要であり、新しい考えを生み出す必要がある。今までなかった考え方 を新たに何もない状態から生み出すのを尊ぶ。前例、しきたりに挑戦する。進歩的、先進的な考え方を持つことができる。

T5

長期的思考
一カ所に長期にわたって永続的に止まるため、物の考え方、スパンが長期的になる。

短期的思考
一カ所には短時間のみ止まるため、物の考え方、スパンが短期的になる。

T6

同期へのこだわり
毎年、同じタイミングで一斉に芽吹いたり、花を咲かせたり、植えたりする、同期性を重んじる。
同じタイミングで新人を組織に入らせる。同じタイミングで組織内に芽吹いたり、入ったりした複数の者同士を、格差を付けずに平等に扱おうとする。

同期意識の希薄さ
行動を起こすタイミングがあまり一斉でなく、同期性に余りこだわらない。

E

その他(etc)

E1

ウェット、液体的
互いに近接し、一カ所に定着するのを好む。

ドライ、気体的
互いに離れて、動き回るのを好む。

E2

母権的
女性、母性が強い。
大地の母神を信仰する。

父権的
男性、父性が強い。
天の父なる神を信仰する。

E3

動物殺生禁忌
家畜等の動物を殺生するのを嫌う。慣れていない。

動物殺生容認
家畜等の動物を殺生するのに慣れている。平気である。

E4

地域=日本、東アジア(中国、韓国、タイ、インドネシア・・・)、ロシア等

地域=欧米、アラブ、トルコ、ユダヤ、モンゴル等









牧畜民憲法と農耕民憲法



以下の説明は、農耕民憲法と、その対比としての牧畜民憲法を明文化するのが目的である。
農耕民社会憲法が共通マスターとして存在し、その一類型として日本村社会憲法が暗黙のうちに存在する。
牧畜民社会憲法が共通マスターとして存在し、その一類型として西欧、北米各国の憲法が存在する。

日本国憲法は、アメリカ牧畜民の規範を、日本の農耕民規範の上に強制的に押し付けると何が起きたかの実例として分析可能である。日本では、日本国憲法は、スーパーお上であるアメリカの威光で表面的には唯々諾々と受け入れられたが、強力な女性、母性の抵抗で、ほぼ骨抜きにされ、日本社会の内実は、以前からの村社会のまま保持されている。
アメリカ主導で日本に導入された日本国憲法は、牧畜民憲法の一類型として捉えることができる。

今の日本の日本国憲法はただの飾りであり、日本村社会の掟、日本村社会憲法が、日本社会の真の憲法である。それは女社会憲法でもある。日本村社会の掟=世界に広がる稲作農耕民社会の掟の一類型である。
アメリカ主導の日本国憲法=牧畜民的憲法の事例、日本村社会の掟、ルールを農耕民的憲法の事例として、そこから牧畜民的憲法、農耕民的憲法を明文化することが可能である。
一方、日本では、スーパーお上のアメリカへの従順の一環として、日本国憲法の条文の不可侵、神格化も起きている。

東アジア、東南アジアやロシアの社会主義、共産主義国家の農耕民の規範も、西欧起源のマルクス主義の牧畜民規範の上からの導入になっている点に注意すべきである。社会主義、共産主義のイデオロギーは見かけだけで、実態は農耕民の憲法、女社会の憲法と化している。
農耕民的憲法は、どこも当初は牧畜民的憲法のお仕着せになる。農耕民が女性的なため、自分では憲法作成とかリスキー過ぎて冒険しないので作れないし、社会事情の内部隠蔽を行いやすく、表の顔として牧畜民的憲法を活用し、実際には明文化されない農耕民的憲法で動く。
以下では大局的な箇条書き形式にまとめている。北米牧畜民が制定した日本国憲法の牧畜民的側面を条文ごとに明示すると共に対応する農耕民的憲法を明示している。そこから牧畜民的憲法と農耕民的憲法を導出している。
関連のある男社会憲法と女社会憲法も、精子卵子の違いに立ち返ってまとめることが可能である。

牧畜民憲法と農耕民憲法の違いの根本は、「お上」の概念の有無である。「お上」は、単独の統一権力による、国民を総合的に支配する集団に対して国民が自主的に付けている、自分たちはあなたがたに従順ですという意思を示す敬称であり、そこでは実質的一党支配、大政翼賛、一党独裁が行われる。この「お上」の概念は、農耕民憲法に強く見られる一方、牧畜民憲法では希薄である。その背後には、権力に対する男女の考え方の性差があると考えられる。

強者、権力者からの自由独立を選びたがる男性的心理が牧畜民的憲法を生み、強者、権力者に惹かれ、なびき、敬い、一体化して従うのを選びたがる女性的心理が農耕民的憲法を生んでいる。「お上」はこうした女性的な心理により発生し、存続している。

「スーパーお上」は、国内の最高権力者集団=「お上」の更に上位に位置付けられる、国外から大きな影響力を持つ国際的な強国勢力に対して女性的な農耕民社会が付ける敬称である。日本を軍事的に実効支配するアメリカとかが実例である。

以下では、農耕民憲法と牧畜民憲法が根本的に違うことを説明する。その背後に、女社会憲法、母性的憲法と男社会憲法、父性的憲法の違いがあることを示す。

牧畜民憲法 農耕民憲法
1.大局的なタイプ分け
1-1 動物的思考か植物的思考か 動物的思考の憲法(人々があちこち動き回ることが前提の社会システムに合致した憲法。動的な精子に対応。) 植物的思考の憲法(人々が一箇所に定住して動かないことが前提の社会システムに合致した憲法。静的な卵子に対応。)
1-2 牧畜か農耕か 牧畜民憲法(麦作と家畜の放牧の兼用の生活に適した憲法) 農耕民憲法(稲作農耕、畑作農耕の生活に適した憲法)
1-3 男性的か女性的か 男社会憲法(個人行動優先、責任を回避しない、リスクを取る、進歩的な人々に適した憲法。種の勢力拡張向きの精子の持ち主に対応。) 女社会憲法(集団行動優先、責任分散回避、保身第一でリスク回避、遅滞的な人々に適した憲法。種の勢力温存向きの卵子の持ち主に対応。)
1-4 父性的か母性的か 父性的憲法(対人関係の分離と個人的自由の容認) 母性的憲法(対人関係の癒着と相互一体性の優先)
1-5 気体的か液体的か 気体分子運動タイプの憲法 液体分子運動タイプの憲法
2.地理的分布
2-1 世界での分布地域 西欧、北米等(西洋) 東アジア、東南アジア、ロシア等(東洋)
2-2 世界での分布国の例 西欧憲法、アメリカ憲法、(アメリカの軍事的支配下で制定、運用されている)日本国憲法及び韓国憲法 中国憲法、ベトナム憲法、日本村社会の掟、伝統的韓国社会の掟、北朝鮮憲法、ロシア憲法
3.権力のあり方
3-1 支配政党数 ニ党~多党支配 実質的一党支配、大政翼賛、一党独裁(単独統一権力者集団=「お上」による支配)
3-2 人々の権力者集団への態度 強者、権力者集団は自分たちの自由を侵害する、自分にとって敵となる油断ならない存在。権力者集団が自由に出来ないように監視、批判、権力者集団の社会的機能の分割を法律で明文化する。
強者、権力者からの自由独立を選びたがる男性的心理が原型である。
「お上」(強者、権力者集団)は、白色で偏り無く、公正で慈愛に満ちた温かな存在。人々は「お上」に惹かれ、なびき、媚び、「お上」の味方をし、「お上」に心理的に依存、信頼し、「お上」に全部お任せする。すなわち、判断を「お上」に委ねて自分は判断責任回避、「お上」への判断責任転嫁をする。「お上」に迎合、「お上」の神格化をする。
「お上」とその使用人=役人の独裁になる。
強者、権力者に惹かれなびいて、その子供を産みたがる女性的心理が原型である。
4.社会統制と秩序
4-1 社会統制のあり方 自由主義(社会統制の度合いが小さい。個人の自由に任せる度合いが大きい。)
(日本国憲法31条)
統制主義(社会統制の度合いが大きい。個人の自由に任せる度合いが小さい。)
4-2 公共秩序の優先度 公共秩序より個人の自由を優先する。
(日本国憲法31条)
個人の自由より公共の秩序を優先する。
5.議論のあり方
5-1 政策議論の開放的度合い 議院でのオープンな議論を好む
(日本国憲法57条)
公開の場では建前しか言わず非公開の場での秘密主義による本音での交渉を好む
5-2 多数決導入の度合い 多数決(仲間割れを許容)
(日本国憲法59条)
満場一致(和合重視と仲間割れの回避。敵対勢力の議場欠席。)
6.立法者と法治主義
6-1 真の立法者は誰か 選挙で議員を選び、議員が立法を決定する。
(日本国憲法41条)
選挙や議員は飾り。議員の国会答弁は「お上」の役人の書いた文書を読み上げるだけ。実質的な立法、行政は「お上」の役人が行う。議員は利害調整がメイン。
6-2 法治の程度 法治主義(国の行動は法律準拠である。明文化された法律に従う。)
(日本国憲法98条) 
恣意主義、人治主義(法治主義は「スーパーお上」の欧米列強に合わせただけの建前。法令は、「お上」(強者、権力者)と役人が恣意的に柔軟に適当に決める。)
7.個人の人権と自由
7-1 基本的人権の尊重 人々の基本的人権を冒すことの出来ない永久の権利として尊重する。
(日本国憲法11条)
人々の人権は、人々の行動が所属集団の秩序に合致する限りにおいて認められる。さもなくば所属集団追放扱いで、集団内に入れてもらえない状態になり人々の生死に直結する。
7-2 個人への自由、人権付与の度合い 個々人に自由と人権を与える。自由行動、個人行動が認められる。
個人の自由、自立を好む男性的心理が原型である。
(日本国憲法13条)
個々人の集団所属と相互一体化が前提。あくまで全員の一斉行動、集団行動がメイン。個人行動は禁忌である。個人の自由、人権は集団行動を乱さない範囲内のみで認められる。
仲良し集団での一体行動を好む女性的心理が原型である。
7-3 表現、報道、信教の自由を認める度合い 人々の表現の自由、信教の自由、報道の自由を大元で保証する。
(日本国憲法19条、20条、21条)
表現の自由、信教の自由、報道の自由は、「お上」許容の範囲内に限定される。監視、検閲あり。(日本では「スーパーお上」のアメリカの影響力で自由は表面上は保証されている。)
7-4 個人尊重の度合い 個人を尊重する。
(日本国憲法13条)
所属集団あっての個人である。集団に所属しないフリーな個人を認めない。個人よりも、個人の所属集団の意思を尊重する。
7-5 プライバシー尊重の度合い 個人のプライバシーを尊重する。
(日本国憲法35条)
相互監視、密告による集団秩序の維持を尊重する。
7-6 個人の権利の保持 個人の権利(住居、所持品等)は侵されない。
(日本国憲法35条)
所属集団あっての個人である。個人が所属集団の秩序から外れた場合、個人の権利は制限される。
7-7 個人の権利と義務の優先度 個人の義務より権利を優先する。
(日本国憲法11条)
個人の権利より義務を優先する。滅私奉公を優先する。
8.個人の平等と社会的公正
8-1 個人の平等 (選挙等個人の政治参加で)個人は平等である。(ただし実質的に社会的階級が存在し、個人が不平等の場合が多い。)自由競争がある。個人の機会の平等が確保される。
(日本国憲法14条)
個人が不平等である。「お上」の一員とそれ以外の人々との間に超えられない身分の壁がある(官尊民卑)。集団所属者とフリーの者との間に社会的格差がある(非正規雇用差別、既卒者差別)。所属集団に同期の年齢で入った人々同士の間で処遇が均一化され、結果の平等が確保される(公務員処遇の年功序列)。
8-2 社会の公正さの確保 個人の人権は平等であり、不当な差別の回避、公正さが確保される。
(日本国憲法14条)
「 お上」と癒着した御用聞きの企業の人間とかが不当に利益を得やすい。公私混同の便宜供与が起きやすい。
8-3 国の財政資金の拠出 国の財政資金は、国以外の一般団体にそのまま拠出できない。
(日本国憲法89条)
国の財政資金は「お上」が許可すれば国以外の一般団体への拠出の自由がある。
9.政治的責任
9-1 権力者の政治責任 最高支配者は責任を負う。 「お上」は政治責任を負わない。とかげのしっぽ切り、頭の挿げ替えをする。
9-2 公務員の罷免 公務員を人々が罷免できる。
(日本国憲法15条)
公務員=「お上」の使用人であり、罷免を決めるのは「お上」の組織の内部である。人々は公務員を罷免できない。公務員試験への門戸は公正に解放されていることが多い。
10.権力の集中
10-1 権力分散(三権分立)の有無 立法、行政、司法の三権分立である。権力は分断され、集中を制限される。 立法、行政、司法の三権融合である。権力機関は「お上」に一体化している。権力が一極集中する。
10-2 司法と権力者との関係 司法、裁判所は権力的に独立した存在である。刑事事件を扱う裁判所が公平を重視する。
(日本国憲法76条)
裁判所は「お上」の一部である。裁判所は、「お上」に有利な判決を出す。
10-3 地方自治の是認の度合い 地方自治が認められている。
(日本国憲法92条)
地方は中央の「お上」の出先機関であり、中央の命令に従う。
11.民主主義のあり方
11-1 普遍性の程度 民主主義は人類普遍の原理。グローバルで、どこに行っても誰に対しても成立すべきと考える(グローバル民主主義)。
(日本国憲法前文)
民主主義が成立するのは、ローカルで、自分たちの狭い身内限定(ローカル民主主義、身内限定民主主義)。身内が政治的に優遇されることにはとても熱心だが、余所者の困窮には冷たく、無関心。余所者(非正規雇用者とか)がどんなに人権を侵害されていても知ったことではないと考える。

なお、農耕民社会における「お上」は、

・日本(天皇家とその使用人である役人)

・中国(共産党と国の役人)

・ベトナム(共産党と国の役人)

・韓国(与党と国の役人)

・北朝鮮(金氏一族、党と国の役人)

である。

また、農耕民社会における「スーパーお上」は、

・アメリカと西欧(日本にとって)

・アメリカと西欧と中国(韓国にとって)

である。


農耕民社会理解において注意すべき点

日本人は、農耕民の系譜に属する訳であるが、このことに関して、従来のいくつかの誤った考え方を修正することを提案したい。



[その1.農耕民族の反対は狩猟民族ではない]

従来、「農耕」民族の日本人と「狩猟」民族(?)の欧米人を対比させる見方が、日本人の特徴を説いた論説の中に多く出てくるが、これは誤りである。正しくは、農耕民族と遊牧・牧畜民族との対比とすべきである。それはなぜか?

そもそも、人間が狩猟を主にして生活していたのは、植物や動物を育てたり、飼ったりするようになる以前の話である。要は、人間の生活の発展、進化段階として、

発展の前段階
↓(
原始、後進的)

発展の後段階
↓(
先進的)

狩猟民

┬→

農耕民(植物栽培)

└→

遊牧・牧畜民(動物飼育)


となっているのであり、狩猟民と農耕民を対立させて比較するのは、歴史的に前段階と後段階を取り出して対比していることになる。これだと、狩猟民族とされ る欧米人は、農耕民族の日本人より、発展段階が前の、遅れた後進的な原始的な状態にあるということになる。これは、文化的に先進国が欧米であり、日本がそ の後を追っかけるパターンが多いことと明らかに矛盾する。

また、そもそも、日本人も、農耕を始める前は、狩猟民だったのであり、農耕民と狩猟民を対比、対立させて捉えることは、自分のルーツが狩猟民だったことを否定することになる。

日本や東アジアと、欧米との文化対比は、前者が、稲のような植物栽培をよりメインとする農耕民、後者が、前者と比較して羊や牛、馬のような動物を飼育することをよりメインとする遊牧・牧畜民であることの違いによって説明するのが適当である。

なぜならば、発展段階としては、農耕民と遊牧・牧畜民とは、同時並行状態にあり、互いに同時に比較、対比する対象としてより適切であると言えるからであ る。現に、欧米社会は、動物飼育による肉食、酪農の比重が日本などに比べて高く、その点、より遊牧・牧畜民的と言えるのである。

今後は、日本と欧米の比較に、農耕民族と狩猟民族という誤った対比を行うことを止め、農耕民族と遊牧・牧畜民族の対比を用いるべきである。


[その2.日本人だけが農耕民族なのではない]

何か、従来の日本人の特徴を説いた論説を読んでいると、日本人だけが農耕民族であり、中国、韓国とか日本以外の他の社会は、みな牧畜民族だみたいな書き方をしている事例に頻繁に出会う。

確かに、中国、韓国の人は、日本人に比べて、肉食をする割合が高いかも知れない。だからと言って、彼らが欧米並みの遊牧・牧畜民かと言われれば、首をかしげざるをえないのが実情だろう。

要は、牧畜に従事する人々(民族)の中にも、

(1)
農主牧従 確かに牧畜もある程度するが、メインは稲作、畑作の農耕であるタイプ
(2)
牧主農従 確かに小麦栽培のような農耕もある程度するが、メインは家畜飼育の牧畜であるタイプ

がいるのであり、確かに後者は牧畜民と言ってよいかも知れないが、前者は、生業に占める比率から言えば農耕民と言うべきである。中国、韓国は、上記の (1)に相当すると考えられる。彼らは、牧畜もある程度するが、主要な点では日本と同じ農耕メインの民族と言えるのではないか。



農耕民の取るべき途

現在、欧米主導で提唱されている、地域の垣根を超えたグローバリズムやあちこち移動することを重視、推奨するモバイル指向の考え方は、欧米の動物的な牧畜民の考え方を、国際標準として定着させようとする策略であり、日本、東アジア、東南アジア、ロシアのような農耕民は、それに乗ってはならない。この考え方だと、牧畜民 がスタート地点から有利であり、機動性に劣る農耕民は負けてしまう。


日本のような農耕民は、定位置に居を定めて、毎日、その地点について、改良を繰り返し、蓄積していくことで、その場所をより生活しやすい、恵まれたものに していく。その改良の蓄積によって恵まれるようになった好条件の位置、場所を累々として守り、独占して、牧畜民等の他人を寄せつけないものにするのが、農耕民の取るべき戦略である。

また、現在世界で優勢な欧米の牧畜民らに対抗するためにも、世界中の農耕民同士の連帯の途を探るべきである。彼らは、住む場所は違っていても、互いに同じ植物的思考、価値観を持つ同類だからである。(2006年執筆)



農耕民社会、牧畜民社会のコンピューター・シミュレーション

農耕民社会は、液体分子運動で表すことが出来る。以下の動画で、一つ一つの個体の動きが一人一人の個人の動きに相当する。個々人は一箇所に集約的に定住して動かず、集団に所属し続けよう、周囲に絶えず気配りして仲間外れにされないようにしよう、集団の中心部に入ろうとする。


液体分子運動(農耕民社会のコンピューター・シミュレーション)↑


一方、牧畜民社会は、気体分子運動で表すことが出来る。以下の動画で、一つ一つの個体の動きが一人一人の個人の動きに相当する。個々人は一人一人がバラバラに粗放的にオープンに離散して周囲から自立独立して、独自判断であちこちに移動しよう、未知の領域に進出しようとする。


気体分子運動(牧畜民社会のコンピューター・シミュレーション)↑