系統歴史学

-世界史教科書からの法則抽出の試み-


2014.11-2015.3 大塚いわお

第6版




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目次
(1)現状の課題
(2)法則抽出手順~「歴史部品」の割り出し
(3)抽出作業を行うために必要な前提知識
(4)抽出作業
(4.1)言い換え作業
(4.2)整理ポイント
(5)抽出した歴史部品
(5.1)勢力の興亡のルート、コース
(5.2)文化発展のルート、コース
(5.3.1)進歩の法則
(5.3.2)後退の法則

(1)現状の課題

現状の日本では、世界史(や日本史)が、一般的、系統的な歴史法則が明らかにされないまま、高校等の授業で教えられており、固有名詞の機械的暗記のオンパレードになってしまっている。

そこで、教えられる大量の歴史史実の基盤にある共通の法則、ルートを予め整理して学生たちに提示することで、初学者でも、歴史のエッセンスをたちどころに把握できるようにする。歴史史実を、共通のコース、ルートをたどりながら把握できるようにすることで、史実を、頭のなかで整理しやすくする。

歴史は、現代のリアルタイムでの一人ひとりの生き方につながるものであり、いわば生き方の法則として、歴史を学べるようにする。


(2)法則抽出手順~「歴史部品」の割り出し

最初に、おおまかで全体を鳥瞰する記述の小さなパンフレットを完成させる。歴史史実をつまみ食いの形で一般化して引用する。

次に、教科書の記述を一般化して、記述を整理して、マインドマップ等に集約する。

最終的には、歴史を、共通の規格化された部品、パーツ=「歴史部品」の集合体として捉える。「歴史部品」としての、ブロック部品、マイクロ部品の組み合わせとして、歴史を表現する。

たどるコース、ルートの典型化、可視化を、「歴史部品」を組み合わせることで可能にする。


(3)抽出作業を行うために必要な前提知識

・大まかな、枝葉末節に入らない、世界史の知識(高校世界史教科書レベルが適当)

・心理学、社会学(いわゆる行動科学)の基礎的な知識(人間個人や社会の仕組みについての理解が前もって必要)

・経営学の基礎的な知識(国家、民族経営についての理解が前もって必要。企業経営と共通点多い。) 国家経営学、民族経営学への発展を前提とする

・地政学、軍事学の基礎的な知識(歴史は、攻めたり、滅ぼしたりの繰り返しであるため。会社乗っ取りのように、非武装での攻撃、せん滅を含む。)


(4)抽出作業

(4.1)言い換え作業

固有名詞オンパレードの教科書文言を、より一般的、普遍的な内容に言い換える。固有名詞を消す。

一般化、普遍化した教科書内容から、共通のコース、ルートを抽出する。



[参考]

教科書文言の言い換え方(内容一般化の手法)


時代によらない一般法則の抽出

「歴史は繰り返す」を史実の一般化によって明らかにする。


□言い換え前→言い換え後

(上級・中級・下級、強弱、人権有無、等の概念と掛け合わせる)

・帝国→国家

・前の帝国→以前の国家


・民族→自民族、周辺民族、他民族、別の民族

・世界を形成→独自の世界を形成


・国王、皇帝→トップの権力者

・諸侯→地方の権力者

・貴族→以前からの有力者

・武士、騎士→軍人(武装の政府雇用者)


・文官→非武装の政府雇用者


・農民→農業従事者


・富農→経済力ある農業従事者

・貧農→経済力無い農業従事者


・市民→都市住民

・民衆→一般人


・王朝、王国→国家(血縁、血統支配)

・荘園→(旧来の)農業領地経営


・固有名詞→省略か一般化(カッコ書きで残すことも)

・固有の用語→できるだけ一般化


・地名→国内地方~一部地域、自国、他国、世界の他領域、全世界

・宗教名→ 自宗教、自宗派~他宗教、他宗派


・●の東西南北→●の周辺部


(固有名詞の例)

・イクター→分与地

・十字軍→宗教的軍事行動


[参考]実際の世界史教科書内容の一般化例(木村靖二、佐藤次高、岸本美緒「詳説世界史B」山川出版社、世B304、2012年、より)

-------ここから------

事例1 P.122「ゲルマン人の大移動」

◎人の大移動

●以北の■には、以前(前6世紀)から●人が広く住み着いていた。●海沿岸を現住地とする◎人は、●人を隣接方向へと圧迫しながら勢力を拡大していった。◎人は次の時代(紀元前後頃)には、●川から▲海沿岸至るまでの広大な地域に広がり、既存の巨大国家と境を接するようになった。

その頃の◎人は数十の部族にわかれ、各部族が一人の単独権力者や数人の合同での権力者を持っていた。上位特権あり、中位、下位人権無しの各身分差がすでに発生していたが、重要な決定は、上位と中位の身分の人々からなる成年男性自由人の全体集会である●会が行った。農業がおもな生活の手段となり人口が増えてくると耕地が不足しこれが民族移動の内的要因となった。そのため、次の時代(巨大国家の後期)になると、彼らは●川下領域まで広がり、巨大国家の下級役人、傭兵、小作人として、平和的に巨大国家内に移住するものも多くなった。同時に◎人の社会では小部族が軍事的指導者であるトップ権力者のもとにまとめられて大部族へと成長した。

次の時代(4世紀後半)、別系統の人種民族の●人が●川を超えて隣接地域に進み、◎人の一派である●人の大半を征服、さらにその隣接地域の◎人である▲人を圧迫した。そこで▲人は●年に移動を始め、翌年には●川をわたって既存巨大国家領内に移住した。それをきっかけにほかの◎人諸部族も大規模な移動を開始し、約●年におよぶ◎人の大移動が始まった。◎人に属する●人は●年巨大国家の首都を略奪した後、●地域と●地域に移動して建国した。●人は●地域に、また●人は●地域に、●人は●地域にそれぞれ建国した。●人は●の島に渡り、のち次の時代(9世紀)までの間に複数連合国家をたてた。

◎人の移動 ◎人の移動は、単に武力による侵入ではなく、家族ぐるみの移動であった。

一方、別系統の人種民族の●人は、次の時代(5世紀前半)にトップ権力者●が●地域中心に別の巨大国家をたてた。しかし●年●の戦いで、隣接する別の元巨大国家●の片割れと◎人の連合軍に敗れ、トップ権力者●の死後、その巨大国家は崩壊した。この混乱のなか、元巨大国家●の片割れは、◎人の傭兵隊長●に滅ぼされた。

トップ権力者●のもとで●人の支配から脱出した●人は、●半島に移動して、元あった別の●人の国家(血統支配)を倒し、ここに建国した。●年●地域に国家(血統支配)●が建てられたのを最後に、民族大移動の波は一応の終息をみた。先住民●人は、今日の●、●、●、および●半島に追いやられたが、その後もなお独自の文化を保ち続けた。

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事例2 P140-141 「(ヨーロッパ)中世都市の成立」「都市の自治と市民たち」

自治権の獲得 要点整理

(p140下)

(都市)住民は、最初、権力者(領主)の保護と支配を受けていた。

トリガー 自分たちの産業(商工業)が発達する。

権力者に対して、権力者(領主)支配からの自由と自治を求めはじめた。

権力者(領主)を倒して、自治都市国家を樹立した。

別の権力者(皇帝)から認定を受けて、自治権を獲得し、既存の中級権力者(諸侯)と同じ地位に立った。

自治都市国家同士の都市同盟を生成した。

(p141下)

自治都市周囲を城壁で囲って、防衛した。

自由のない下層の人間(農奴)が、自由を求めて流れ込んだ。

自分で行政組織を作って、自治に当たった。

最初は、規模の大きな業者が、市政を独占していた。

中規模の別業種の業者たちが、不満を持って、組織を分離し、前の市政独占していた業者たちと抗争しながら、市政への参加を実現していった。

(p142上)

市政に参加できるのは、経営者だけで、労働者は参加の資格が無かった。

行政組織は、自由競争を禁じて、細かい規制を敷いた。

市政に参加できる経営者たち以外の参加資格の無い人々を、活動から締め出した。

経営者層の地位は安定したが、経済や技術の自由な発展を阻害した。

上層都市住民が、権力者(皇帝)に融資して、その地位を左右した。

上層都市住民が、権力者(教皇)を自分の一族から輩出するようになった。

(p141中)

(別タイプ)都市住民が、権力者(国王)との結びつきが強かった。

権力者の権力の伸張と共に、都市が、権力者の行政の中心地として成長していく。

-------ここまで------

(4.2)整理ポイント

抽出結果から歴史法則を導出するための整理ポイントを明らかにする。

少なくとも、以下の点に着目する。

(整理例は、世界史教科書全体を俯瞰して、普遍的に見られる事項として抽出したものである。)


A 勢力

A1 勢力(拡大、繁栄、衰退)

地図上で、一定の勢い、力を持つ人々の集まりについて、その勢いの拡大、縮小、消長のタイプや原因について説明する。

人々の集まりとしては、

・民族・人種

・政権

・企業等の組織

について言及する。

どのような原因で、勢力が伸張し、繁栄し、衰退し、滅亡したかについて説明する。

自分たちの勢いが拡大すると良いことで、縮小、滅亡すると悪いことであることを説明する。


●どうすれば、勢力を伸ばし、繁栄し、その繁栄を維持できるか、衰退から立ち直れるかについての、歴史上の知見を与える。

■整理例 繁栄の条件

・(商業)

 -交易、貿易をしやすいこと。交通の要衝であり、市場を開きやすいこと(中国 北宋の都の開封、等)。

・(資源の確保)

 -自国の領土に鉱物、石油などの有用な資源を潤沢に保持しており、それら資源を容易に採掘できること。

 -自国風土が、植物(稲、小麦等)の栽培に適していること。

 -自国風土が、動物(家畜)の飼育、魚の漁や養殖に適していること。

・(工芸)

 -有用なツール(ハードウェア、ソフトウェア、プロダクト)の製造能力がある自国民がたくさんいること。

 -売り物になる美術工芸品、文芸、音楽等の作成能力がある自国民がたくさんいること。

・(情報の確保)

 -新しい、重要な情報、ニュースを入手、発信しやすい位置にいること。

・(モチベーションの確保)

 -進んで働くモチベーションを自国民が持ちやすいこと(労力が報われる社会であること)。

・(変革の確保)

 -自国民が、今まで無かった方向へ進むこと、チャレンジすること、変革をすること(停滞、弛みの防止)を積極的に行いやすいこと。


B 権益

B1 権益(資源、領土、人材・・・)

持っているとその持ち主(の人々)の生活レベル向上に役立つ、生きていくうえで必要な様々な利益をもたらす資源、物資や人材、領土と、その利益のタイプ、特徴について説明する。

権益の

・取得、奪取

・維持

・消滅

のきっかけ、取られた政策内容のタイプ等について説明する。

●どういう風にすると権益を得やすいか、守りやすいか(失いやすいか)についての歴史上の知見を与える。

■整理例 権益の取得 

(権益取得)

・権益のありかについて、その権益の第一発見者、発明者となり、先行者として、ライバルに気づかれないうちに、つばを付けて全て自分の領土化する。

・武力、外交力を用いて、既に権益を確保しているライバルを攻略して、横取りする。


B2 侵略

侵略が起きる原因と、進行プロセスについて説明する。

原因としては、例えば、

される側:豊富な天然資源等の既得権益を保持している割に、軍事力、武装が弱い

する側:社会が不振で行き詰っており、その打開のために、他国の権益に目を付ける。あるいは、新たに勃興した勢力が、さらに伸張するために、既存の権益奪取に目を付ける。

等の内容について説明する。

いかに侵略を進めたか、いかに他国の侵略を防御したか、そのノウハウについて説明する。


●どうすれば他国の権益を奪取できるか、どうすれば他国に権益を横取りされずに済むか、歴史上の知見を与える。

■整理例 権益の奪取、維持

(権益奪取)

・強大な武力を用いて、現在の権益保持者である他国を攻撃し、陥落させることで、権益を奪う。

・巧みな外交力を用いて、現在の権益保持者である他国を追い詰め、逃げ場を無くして屈服させることで、権益を奪う。

・潤沢な資金力を用いて、現在の権益保持者である他国に権益売却を持ちかけ、権益を買い取る。

(権益維持)

・自衛、反攻の武力を用いて、自国権益を狙う他国の攻撃を封じ込める。

・外交力を駆使して、自国権益を狙う他国の戦略行使を封じ込める。他国に追い詰められないように、逃げ場、余地を確実に用意しておく。

・経済的に困窮して、自国の権益を他国に売り渡さずに済むように、資金面での蓄えを確実に用意しておく。


C 支配体制

C1 支配

国家とかにおいて、支配層と被支配層の関係がどのように構築され、維持され、揺らぎ、消滅したかについて説明する。

どういうタイプの人たちが支配層として君臨したのか、その支配が長期に渡った、あるいは短期に終わった理由について説明する。

●どうすれば支配者になれるか、どうすれば支配を長期化できるかについての歴史上の知見を与える。

■整理例 支配

(支配者になるコツ)

・社会の中に、自分のベースとなる居場所(基地)を確保すること。

・自分の行動に賛同、助言してくれる協力者、友人、参謀を確保すること。

・こうすれば上手く行くという、自分なりの戦略、ビジョンを確保すること。

・防波堤になってくれるパトロン、有力者等を確保すること。

・自分のために下働きしてくれる人たちを確保すること(自発的に働いてくれるようにすること)。

・自分の上を行く者に対抗できるように、絶えず能力を磨くこと。

(支配長期化のコツ)

・いったん支配が安定したら、その状態を保持し続けて、あまり動かさないようにする。体制を確立する。

・反乱が起きないように、

  -自国民を生活面で充足させ、不満が出ないようにし続ける。

    +自国民への経済面でのバラマキを適宜行う。

  -自国民の内政への不満を抑圧する。

    +武力、警察力を整備して、反抗する者を常時取り締まる。見せしめを活用する。

  -自国民の内政への不満をガス抜きする。

    +自国外に仮想敵国を作り、自国民の注意をそちらに向けさせる。

・自国を取り巻く状況の変化を素早く察知し、それに応じた社会の変革を俊敏に、継続的に行う(か、そのフリをする)。


C2 体制、混乱

国家とかの仕組み、体制がどのように構築され、維持され、揺らぎ、消滅したかについて説明する。

どのような社会の仕組みが人々に受け入れられたか、あるいは嫌がられ反乱を起こされたかについて、実例をもとに、その理由についてタイプ分けして説明する。

どのような原因で社会が混乱し、その混乱が収まったかについて、タイプ分けして説明する。

●自分たちの社会がうまく回るために、どのような仕組みを作ればよいかについての歴史上の知見を与える。

■整理例 混乱の防止

・災害(天災、人災)の予防、起きた後の迅速な対応を心がける。

 災害(天災、人災)で社会が混乱しないように、

  +予め発生シミュレーションを徹底する。

  +起きてしまったら、とりあえず復旧するか、新しい整備、整地を行う。計画を迅速に立案し、実行に移す。 

・自国民が心理的混乱を起こさないように対処する。

 -政策が朝令暮改にならないよう、気を付ける。

 -政策が自国民にとって過酷になり過ぎないように、気を付ける。


D生活

D1 富裕と貧困

どのような場合に、どのようなプロセスで国や人々が富裕になり、あるいは貧困に陥ったか、貧困から抜け出したか、その原因、理由について説明する。

なぜ人々の間に経済格差、所得格差が生まれ、拡大、縮小していったか、その原因、理由について説明する。

●どうすれば富裕になれるか、貧困から抜け出せるか、格差を無くせるかについての歴史上の知見を与える。

■整理例 富裕になるやり方

(教育)

・稼ぐ能力を新たに学習で後天的に身に付ける。

・先天的な天賦の才能を発見しやすくする。

(ライバルの活用)

・ライバルとの競争力を身に付ける。

 -ライバルのノウハウを内偵により取得し、追い付けるようにする。

 -ライバルが持っていない独自のノウハウを発見し、実用化する。

■整理例 格差をなくすやり方

(格差をなくす)

・上位に就いた者が、何もせずに怠けているか、間違ったことばかりしていると、直ぐに下に落ちやすい社会制度を作る。既得権益者の維持、固定化をしにくくする。

・いったん落ちても、努力と才能があれば、容易に這い上がりやすい社会制度を作る。

・社会を、時々かき回して、新陳代謝を行う。


D2 自由、権利と圧政

どのようなプロセスで、人々が自由、権利を得たか、得た自由、権利を維持したか、失ったかについて説明する。

どのようなプロセスで、圧政が生じたか、それはどのようにして続いたか、どのようにして打破されたかについて説明する。

●ポイント

・どうすれば自由、権利を獲得し、維持できるか

・どうするとせっかく得た自由、権利を失ってしまうか

・人々から自由、権利を上手に奪うにはどうしたら効果的か

についての歴史上の知見を与える。

■整理例 自由の獲得

(自由の獲得)

 -自分の能力を周囲に認めさせる。

 -自分の居場所、縄張り、専門分野を取得する。

 -自分のプライバシーを確保する。錠前と鍵を用意する等して、他者が入ってこれない空間を作る。

 -自分の技能、計画をブラックボックス化して、上位者も容易に手出しが出来ないようにする。

 -武器を持って自衛する。

(自由の喪失)

 -自活できる能力を失う。

 -自分の居場所、縄張りを失う。自分の専門分野が無効になる。

 -自分のプライバシーを失う。他者の侵入を許す。

 -自分の秘匿する技術情報、計画情報が外部に流出する。

 -自衛の武器を失う。

(自由の剥奪)

 -個人の自衛をはるかに凌ぐ強大な武力、警察力を持つ。それらの力を行使して、個人のプライバシー、秘匿技術を、強制的に奪えるようにする。

 -社会の制度、個人の運命を自分の思うままに変えられる独裁体制を作り上げる。

(例)ドイツ・ヒトラーのナチズム

 -個々人の行為に対する許認可権限を確立する。

(圧政)

権力者(権力側の人々)は、支配下の人々を、強制的に自分の色に染め上げることで、支配している証とみなす。

(例)中国・清の漢民族への辮髪強制


E 変化

E1 改革、変革(保守、革新)

社会の仕組みを、(自分たちにとって)より良い形に変えようとする、複数勢力間のせめぎ合いのあり方、経過について説明する。

変革の主導権を握った勢力のタイプ(保守vs革新、バックグラウンドの職業の種類・・・)と、どのようにして変革の主導権を握ったのかについて説明する。

変革が、改革、革新的なのか、復古なのか、それらはいかなる原因で、どういうタイプの人物~集団由来で発生したのか説明する。

変革のプロセスがどのように進行し、いかなる原因で成功、失敗したかについて説明する。

●どうすれば社会の仕組みをうまく変えられるかについての歴史上の知見を与える。

■整理例 変革の分類

・社会上層部(権力、資本を持つ層)が起こしたか、下層部(労働者、資産の無い層)が起こしたか

・今までにない新しい領域に入るタイプ(革新)か、それとも、元いたところに戻るタイプ(保守)か

・自主的、自発的、内発的なものか、それとも、外部他勢力(他国等)から強制されたものか

・人々に受け入れられたか、それとも、不満を持たれた、拒絶されたか

 -人々を自由に解放するものか、それとも、より束縛して忍従を強いるものか

 -人々の生活を豊かにするものか、それとも、貧しくするものか


E2 反乱、革命

反乱、革命が起きる原因となる社会的問題(貧困、圧政・圧制)と反乱、革命が進行するプロセスについて説明する。

・どのような形で反乱が始まり拡大したか、指導者はどういうタイプだったか

・支配側はどのように火消しに動いたか、どのように反乱は平定されたか

・体制の転覆がどのように行われたか

・革命の結果、従来の支配層はどのような運命をたどったか、どのように支配層が入れ替わったか

法則の形で説明する。

●どうすれば既存の問題多い支配層を打倒し、新たな勢力、政権を樹立できるかについての歴史上の知見を与える。

■整理例 反乱の原因

原因は、

(1)不満

(2)統率の不足

にある。


(1)不満

(低い地位、悪い扱い)

*今までに比べて、地位が低くなった、扱いが悪くなった。地位が低いまま、扱いが悪いまま。

(低い生活水準、貧困)

*生活水準が低くなった、低いまま(生活が苦しい、不満)

 -天災(風水害、火山爆発・・・)による器物破壊、天候不良による生育不良等

 -上位者による搾取

*戦乱による器物破壊

(不自由)

*強すぎる秩序。抑圧、圧政。引き締め過ぎ。自由が無い。

(不正)

*不正の横行。悪法のなすがまま。

(2)統率の不足

(無警察状態)

*弱すぎる秩序。混乱、アノミー。好き勝手やり放題。放任。

*上位者が頼りない。統率力がない。付け入る隙がある。


■整理例 下位者から上位者への転換

反乱の指導者(下位勢力の中心的人物)が権力者(上位者)に変わる。

歴史は繰り返す(また新たな反乱の指導者が生まれる)。

(例)中国における王朝交代


■整理例 自治領内の権力構造

たとえ、外部権力者からの自治を勝ち取ったとしても、今度は、その自治領内での支配-従属関係(成員間の上下関係)が発生することが不可避である。

(例)中世ヨーロッパの都市自治


F 指導者

・反乱、革命を主導する

・体制を構築、維持する

・支配する

社会の指導者個人(王、首相、大統領・・・)~集団組織(政府、中央官庁・・・)のタイプについて説明する。

指導者の、

・人心掌握の手法

・知性のあり方

・運動性、実行力のあり方

・バックグラウンドとなる社会階層

等について、タイプ分けして説明する。

●どのようなタイプの人が歴史に名を残す指導者になれるのか、自分が指導者になるにはどういう資質を身につければよいかについての知見を与える。

■整理例 (歴史上の)指導者の条件

*不満を解消すると人々に約束する

*統率力がある

*率先して実行する(自ら動くか、他人を動かす)

*人々の願いを集約する(落とし所を見つける)能力がある

*人的資源を動員できる(賛同者を多数持てる)

 -その主張内容が賛同されやすい

 -その人柄、性格が惹かれやすい(温かい、思いやりがある)。冷酷だが(怖くて)拒絶出来ない。


G 文化 芸術 科学

今まで価値があるとされてきた考え方やアイデア、それらの実現方法にどのようなものがあるか、タイプ分けして説明する。

なぜ人間がそれらのものが価値あるとしてきたのか、人間の感覚、知覚、記憶、感情のあり方(脳の仕組み)との関連について、分類して説明する。

それらが生まれた自然環境風土との関連について、分類して説明する。

■整理例 歴史に残る文化、芸術、科学、技術

*今までに無い、オリジナルな新境地を切り開いた(ダーウィン進化論)

*今までの技術とかに磨きをかけて、高度に完成させた(景徳鎮の陶器)

*様々な分野に股をかけた集大成を行った(中国・史記の執筆)


H 宗教

今まで、どのような超越者(神)が人間によって求められてきたか分類し、それぞれのタイプについて、興亡をその原因とともに説明する。

(唯一神教、多神教等)

なぜそのタイプの超越者(神)が過去に求められて来たのか、理由を説明する。

■整理例 超越者に求められる存在資質

・道に迷った時に、正しい道、寄るべき道を指し示してくれる存在。

・自分をありのままに受け入れてくれる、包含してくれる存在。

・弱い自分を守ってくれる、強くしてくれる、力を与えてくれる存在。

・間違った自分を矯正してくれる存在。

・災害、不幸から身を守ってくれる存在。


(5)抽出した歴史部品

(5.1)勢力の興亡のルート、コース

勢力=「個人、集団~団体、派閥、企業、国家、民族」等である。

国家経営、民族経営と、企業経営との類似を参考にする。

各コース、ルートごとに、なぜそのコース、ルートが生じたか、原因となる要因との掛け合わせを行う。

歴史の体系化、俯瞰視の可能化を可能にする。


コースを追う対象主体を決めておく。主体の候補(●国、●民族、●派、●会社、●主義者、権力者~その血統・後継●、経営者~その血統・後継●、一般人●)。●には実際の固有名詞が入る。

------ここから

(基本的に上から下へと流れる)

(コースの繰り返し、飛ばし、循環あり。)

□PW(Power)-

[1.発生]

A1.発生、結成、設立(個人がアイデアを思いついて、共鳴者と企画、事業を起こす(しばしば反体制である))

A2.勃興(新たに興した企画、事業がうまく行く)

[2.成長]

A3.成長(企画、事業が次第に伸びて行く)

A4.発展(企画、事業が幅広く展開していく)

[3.上昇]

A5.勢力拡大(企画や事業、それを行う共鳴者、自集団の勢力が大きくなる)

A5b.拡張(企画、事業がより大きく膨らみ、広がっていく)


A6.建国(自分たちの国家としての仕組み、法制等を整備して、そのことを内外にアピールする)

A7.自治(周囲の大きな権力者から距離を置いて、自分たちだけでとりあえず繁栄への道を考え樹立する)

A7b.自主独立(周囲の権力者から影響力を排して、自分の力で独立を成し遂げる)


[4.攻撃]

B1.移動(もっと条件の良いところを見つけようとして、今いる位置から動く)


B2.侵入(既に他者がいるが、条件の良い位置に入り込む)

B3.圧迫(既にいる他者に、心理的、社会的に圧力をかける)


C1.衝突(既存勢力と小競り合いをする)

C2.戦争(既存勢力と大規模な戦闘に入る)


[5.奪取、防衛]

C3a.革命(既存の支配体制を覆して、自分たちが新たな支配者へと転化する)

C3b.復古、反動(以前の支配体制を、もう一度復活させる)

C3c.クーデター(武力による奇襲攻撃で、非合法的に政権を奪取する)

C3d.乗っ取り(既存の体制の下位部分をそのまま活かす形で、新興勢力がトップの座に就く)

C3e.防御、防衛、阻止(新興勢力による体制転覆の試みを阻止して、以前の支配体制を維持する)


[6.登頂]

D1.勝利(戦闘で、決定的に有利になり、相手を負かして降参させる)

D2.定住、移住(既存勢力から新たに奪った条件の良い土地に移り住む)

D3.権益取得(資源掘削等の、持っていると有利になる権益を我が物にする)


D4a.買収、併合(相手を自分の元へと併せ呑み込む)

D4b.(相手を)せん滅(従わない相手を徹底的に滅ぼす)

D4c.占領(相手の領土を軍事力、資金力に物を言わせて自分のものにする)


D4da.植民地化(自分の勢力下に置いた、元他者の領土から自分の利益を吸い上げる)

D4db.自国化、所有(元他者の領土を我が物にする)

D4dc.統一(群雄割拠していた諸勢力を、自分の元へと一本化する)


D4e.支配(相手を支配する、相手をこき使う)

D4f.搾取(支配している相手から、利益を吸い出して我が物にする)


[7.絶頂]

E1.繁栄(勢力が盛んであり、その状態を維持し続ける)

E2.独占、寡占(権益等を、他者を寄せ付けず、自分たちだけで利用できるようにする)

E3.黒字(繁栄して、収支がプラスの状態を維持する)


F1.権益の維持(得た権益を保持し続ける)

F2.連合、同盟、協調(他の大きな勢力と意見の一致を図り、一緒に動こうとする)



[8.下降]

G1.腐敗(勢力内で賄賂などが横行し、機能不全を引き起こす)

G2.乱れ(法秩序が乱れて、各自が勝手に行動する)

G3.分裂(内部で意見の相違が出て、まとまりを維持するのが難しくなる)


H1.陰り(勢力がかつての輝きを失って、力量面で低下していく)

H2.赤字(収支がマイナスの状態に陥る)

H3.衰退(勢力が衰える)


[9.高度維持、再上昇の試み]

I1.改革(勢力内で腐敗し、ダメになった部分を刷新して、新たな繁栄に向かおうとする)

I2.立て直し(衰えた勢力をもう一度元に戻そう、繁栄を取り戻そうとする)

I3.防御、防衛、阻止(敵勢力による体制転覆の試みを阻止して、以前の支配体制を維持しようとする)(C3e.)


[10.縮退]

J1.権益を手放す(財政面等で苦しくなって、持っていた権益を、他勢力へと手放す)

J2.売却(財政面等で苦しくなって、持っていた資産を、他勢力へと手放す)

J3.縮小(勢力が小さくなる)


K1.敗北(他勢力との戦闘に負ける)

K2.逃走(今まで住んでいたところ、居留していたところから逃げ出す)


[11.終了]

L1.滅亡、倒産(事業、集団が立ち行かなくなり、解散して、バラバラになる)

L2.破壊、崩壊(自分たちで構築した仕組みが崩れて、無くなる)


[12.下界(での生活)]

M1.被支配(支配を受ける、使われる側に回る)

M2.抵抗、反抗、反乱(支配者に対して、反対の意思を示す行動を起こす)

(A.に戻る)



(上記各項目ごとに主要な要因を立てる。)

----ここまで


上記の法則では、勢力の強さ、地位の高さにおいて、逆U字を形成する。

最初は小さく、地位が低く、次第に大きくなって上昇し、既存勢力を破って、絶頂期に入るが、その後、たがが緩んで、改革を何度か行い、盛り返すが、次第に力を弱めていき、力を付けてきた別の新興勢力に敗れ、再び小さい存在に戻る、の繰り返しとなる。途中で改革が成功すると、地位や勢力を維持できる場合もある。

一連の動きは、登山(~下山)に見立てることが出来る(登山モデル)。


コース例)太平天国の乱(19世紀後半、東アジアの中国 (参考 山川出版社 詳説世界史B 2012年 P.298)

M1.被支配(農民層は清朝に支配されていた)

→M2.抵抗(清朝圧政への不満が高まった)

→A1.発生(洪秀全が自らをキリストの弟と称して仲間を募った)

→A2.勃興(拝上帝会)

→A3.成長

→A4.発展

→A5b.拡張

→A6.建国(太平天国を建国)

→C1.衝突(清朝と)

→D1.勝利

→D4c.占領(南京を天京と称した)

→G2.乱れ(内輪もめ)

→C1.衝突(清朝漢人官僚の郷勇らと)

→K1.敗北

→K2.逃走

→C1.衝突(諸外国の常勝軍らと)

→K1.敗北

→L1.(首謀者処刑で)滅亡

→M1.(残存者の、既存権力者=清朝と諸外国による)被支配




(5.2)文化発展のルート、コース

科学、技術、芸術、美術の向上、発展、廃れを段階を追って辿れるようにする。


(基本的に上から下へと流れる)

(コースの繰り返し、飛ばし、循環あり)

□CL(Culture)-

[1.暗中模索]

A1.探検、冒険(未踏、未知の領域へ挑んでみる)

A2.実験、研究、試行錯誤(上手く行くものが無いかいろいろ試してみる)

[2.光明の発見]

B1.独創的発明、発見(今までに無い有益な事象を見つける)

[3.上昇]

C1.改良(発見、発明した対象を、自分たちにとってより利用しやすい形に変える)

[4.登頂]

D1.完成、完璧化(これ以上改良の余地が無いところまで、対象を磨き上げる)

D2.集大成(異なる分野の完成品同士を一つにまとめ上げる)

[5.名声の獲得]

E1.普及(人々の間に広く普及する、流行する)

E2.伝播(今まで知らなかった国、人々の元に伝わる)

[6.下降]

F1.旧式化、陳腐化(別の新たな発見、発明により、輝きを失う)

F2.不使用(使われなくなる)

[7.終了]

G1.忘却(人々の記憶から忘れ去られて行く)

G2.消滅(市場等から消える)

[8.保存]

H1.遺産、遺跡化(過去のものとなって、博物館入り等する)


一連の動きは、登山(~下山)に見立てることが出来る(登山モデル)。



コース例)飛行機

(山川出版社 詳説世界史B p410 「科学技術の世紀」より)

A2.研究、試行錯誤

→B1.発明(ライト兄弟 20世紀初め)

→D1.完成

→C1.改良(軍用機への転用 第一次世界大戦中)

→D1.完成

→E1.普及

→F1.旧式化、陳腐化

→B1.発明(ジェット機の開発 第二次世界大戦中)

→D1.完成→E1.普及

→F1.旧式化、陳腐化

→C1.改良(ジャンボ機の開発 民間大量輸送への対応 第二次世界大戦後)

→D1.完成、完璧化


(5.3.1)進歩の法則

以下の事案が、人間の歴史を前進、進歩の方に動かす。

時代に応じて良くなる方向に変化する事案を整理して、今後の歴史の予想を可能にし、どのような未来を期待すれば良いか明らかにする。

(戻し、停滞あり)


□PG(Progress)-

(参考 山川出版社 詳説世界史B 2012年 P.278 19世紀欧米の文化、同書P.410 現代文明の諸特徴)

A1.生存、生活水準(環境適応水準)の向上

B1.人類の生存可能世界領域の拡大(地球探検、宇宙進出等)

C1.時間、空間効率(性能)の向上(車の高速化)

D1.社会的分業化、専門化の進展

E1.資源調達、分配手法の進展(鉄鉱石、石油)

F1.ネットワークの発展(公開情報に任意の人がアクセス可能に)

G1.資本、インフラの蓄積(生活が豊かになること)

H1.自由度の向上(暮らし、対人関係等で)


(5.3.2)後退の法則

以下の事案が起きると、人間は歴史的に後退する。

時代に応じて悪くなる方向に変化する事案を整理して、今後の歴史の予想を可能にし、どのような未来を避けるべきか明らかにする。


□R(Regression)-

A1.有限資源の枯渇(石油、金属、食糧、水の枯渇)

B1.生存環境の悪化(二酸化炭素の増大と地球温暖化等)

(例)世界の抱える環境問題(山川出版社 詳説世界史B 2012年P.412)

C1.子孫の枯渇(日本・中国の少子高齢化、疫病や食糧不足による一斉死)

(例)世界の食糧危機(山川出版社 詳説世界史B 2012年P.417)

D1.人間の今までの能力を超える対象、イベントの出現(放射能汚染、巨大隕石、巨大台風、巨大地震、高致死率の新たな伝染病)

(例)中世ヨーロッパのペストの流行(山川出版社 詳説世界史B 2012年P.142)

E1.生活格差の増大(所得で富める者と貧しい者との格差が拡大すると国が滅ぶ)

E2.世襲の横行等による社会階層固定化、停滞化(上位階層者の下位との入れ替わりが無くなると国が滅ぶ)

F1.自由の喪失(官僚制、武力による権力者支配の進行)

(例)ローマ帝国末期の皇帝中央集権化(山川出版社 詳説世界史B 2012年P.46)

G1.前例踏襲と退嬰的思考の横行、未知への探検実践の減少




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